BAR SABOTENの山と馬と酒

店主のゆるい日常と自然とのふれあい

昨年の今頃

 今年の無雪期の北アルプスは、先週の奥穂高でおしまい。
紅葉の時期の涸沢は、正直気が引ける。 人が多いのは、正直苦手でね。
ただまぁ、雨も沢山降ったし、涸沢池の水量も多い気がして、欲に負けた...
8月に涸沢から北穂高へ登ったんで、今回はザイテンから奥穂高へ。
ちょこっと馬の背行って、前穂高って行程を組んだ。


 河童橋では小雨だったが、明神辺りでは止み、徳沢では色づいた木々の木漏れ日が
たまらなかった。


 何気ない瞬間の美しさが、山の醍醐味だと僕は思う。
正直、山頂に立った達成感も、未だ感じたことがない。変わってるんだろうね。
瞬間、瞬間に広がる世界が、僕の歩を止める。そしていつもの一言を発している。
 「たまらんなぁ」
言葉の意味は分からんが、とにかく凄い自信だ!! のように、
僕の心の震えは、この一言で片が付いてしまう。もう少し頭が良ければ、
色んな言葉があるんだろうけどね。


 広がりだした青空を見ながら、横尾を越え、屏風岩へと辿り着いた。



ロッククライミングも始めてはいるが、いつかあの岩壁も登りたいと思うのだろうか。
そんなことを考えている間に、涸沢に到着した。
今回は、ヒュッテの方にお邪魔して小1時間の休息を、名物のおでんで満喫させてもらった。 トイレ脇から続く道を行くと、涸沢岳を映す鏡池、涸沢池がある、はずだったが、
残念なことに、水たまり程度でしかなかった。 相変わらず、山は理不尽である...


 そのままザイテンの取付き点に、左側から直登したが、ザレザレ過ぎて、僕の体力を
思いの外奪っていった。 勘弁してほしかったわ。 ようやく辿り着いた穂高山荘は、
近々の天候のせいか、登山者も少なく、1人1組の布団で、しかもとんでもなく広々と過ごさせてもらった。
ご存じない方もいるだろうから補足すると、2人で1組の布団は当たり前で、酷い時は...
土曜日の昼間は、本業の競馬を楽しみ、副業の店を開け、5時間運転し、9時間近く歩いたヘロヘロの僕は、深い深い眠りについた。



 翌朝目覚めた僕は、テラスで煙草を燻らせた。 迷惑にならないよう、
かなり端っこでね。 準備が整うと、穂高山荘眼前の岩壁を登り、奥穂高岳へ登頂する。
馬の背へお散歩にも出かけ、前穂高岳へ続く吊り尾根を進んでいく。
紀美子平からは、簡単な岩登りで、20分ほどで山頂だ。



前穂高北尾根と奥に顔を覗かせる、名峰 槍ヶ岳。
写真には写ってはいないが、左には、昨年の今頃登っていた薬師岳が、その寛容な稜線に秋化粧をし、また来いよとばかりにこちらを見ていた。


 そう、昨年の今頃。


ありきたりだが、1年は早い。47歳にもなれば尚更だ。この1年、得た物も失った物もあっただろう。自覚してはいないが、色んな事があったんだろうね。
 あの頃は、なんて陳腐な言葉を言う気はないし、当時と比較して、落ち込む事もない。
人はつい比べてしまうが、現実は比べる事なんて出来ないんだ。 当時と今は、自分自身も、周囲の環境も同じではないから。 そう、ポジティブってのは、性格ではなく、技術なんだ。悩むぐらいなら、考え方を変えればいい。視点を変えればいいだけなんだ。ウダウダ言う暇あったら、小さい小さい1歩を踏み出そう。いずれ頂に到達するよ。別に到達しなくてもいいんだ。道中に見える景色の方が、僕は好きだから。
どんなに準備しても、どんなに努力しても、人生も、山も理不尽だって事を受け入れたら、人生なんて楽しいだけだしね。 


あの日の薬師岳も、今回の奥穂高岳も、本当に楽しい山行だった。この1年の成長も、十分感じることができたしね。


来年の今頃も、どこかの山を登っている、そして過ごした1年に思いを馳せる、そんな自分でありたい。

    俺なりの優勝だバカヤロー

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